区別できない2個のサイコロの確率

私は日本中の数学の先生に訴えたい!!

「三角形の内角の和は180°」ということを勉強するときには、いくつかの三角形について調べてみるだけでなく証明も勉強します。感覚的・経験的理解だけでなく、論理的理解を促しています。

さて、中学でも高校でも確率計算をするときは登場する物を区別して事象を考えるように指導されます。そして、区別しないで考えた事象を同様に確からしいと見なすと経験的・感覚的にあり得ない結果になる例を学びます。しかし、計算された結果が論理的にあり得ない*とは説明されません。

数学という学問である以上、論理的理解を促さなくて良いのでしょうか。少なくとも指導者が論理的にあり得ないことを知っていなければならないのではないでしょうか。

 

*例えば、2個のサイコロを投げて
①両方とも偶数になる
②片方が偶数で片方が奇数になる
③両方とも奇数になる
 という確率計算で明らかです。
【サイコロをA,Bと区別できる】
事象を(Aの目,Bの目)と表します。
偶奇だけ見た事象は次の4通りです。
  (奇,奇)          (奇,偶)

  (偶,奇)          (偶,偶)
それぞれが同様に確からしいと見なせば、それぞれの現れる確率は1/4。
そこで確率は①1/4②1/2③1/4
つぎに1~6の目まで考えた事象は次の36通りです。
(1,1), (1,3),(1,5)          (1,2),(1,4),(1,6)
(3,1), (3,3),(3,5)          (3,2),(3,4),(3,6)
(5,1), (5,3),(5,5)          (5,2),(5,4),(5,6)

(2,1), (2,3),(2,5)          (2,2),(2,4),(2,6)
(4,1), (4,3),(4,5)          (4,2),(4,4),(4,6)
(6,1), (6,3),(6,5)          (6,2),(6,4),(6,6)
それぞれが同様に確からしいと見なせば、それぞれの現れる確率は1/36。
そこで確率は①9×(1/36)=1/4②18×(1/36)=1/2③9×(1/36)=1/4
偶奇だけ見たときと矛盾がありません。

現れる事象が同様に確からしいと見なして良い根拠は

偶と奇,1~6の目の対称性とサイコロAとBの動きが独立であることに支えられています。不均一なサイコロ,AとBが連動しているのでは成り立ちません。

 

【区別できない】
(奇,偶)は(偶,奇) と同一の事象なので偶奇だけ見た事象は次の3通りです。
  (奇,奇)      

  (偶,奇)          (偶,偶)
それぞれが同様に確からしいと見なせば、それぞれの現れる確率は1/3。
そこで確率は①1/3②1/3③1/3
例えば(1,3)は(3,1) と同一の事象なのでつぎに1~6の目まで考えた事象は次の21通りです。
(1,1)
(3,1), (3,3)
(5,1), (5,3),(5,5) 

(2,1), (2,3),(2,5)          (2,2)
(4,1), (4,3),(4,5)          (4,2),(4,4)
(6,1), (6,3),(6,5)          (6,2),(6,4),(6,6)
それぞれが同様に確からしいと見なせば、それぞれの現れる確率は1/21。
そこで確率は①6×(1/21)=2/7②9×(1/21)=3/7③6×(1/21)=2/7
偶奇だけ見たときと矛盾してしまいます。

「登場する物体を区別して考えた事象が同様に確からしいならば、区別しないで考えた事象も同様に確からしくなる」という規則性はないと言えます。